おぢさんのつぶやき -山崎篤史ー

とうとう50代突入してしまいました。白髪が増えてきたおぢさんですが、たまに書き込もうかなぁと思います。

スティーブ・ジョブズを動かした“見返りなき助言”の真価とは?

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見返りを求めない助言は、なぜ尊いのか
―言葉の純度が、人の心を変えるとき

 

 

1. それは、ある上司のたった一言から始まった話です

「お前、それで本当に後悔しないのか?」

これは、ある企業で実際にあった出来事です。
40代の男性社員が、転職のチャンスを目前に迷っていたそうです。
家族も生活も安定している。
けれど、心のどこかで“現状維持”に違和感を抱えていたといいます。

そんなとき、彼の直属の上司が、何気なく声をかけました。
冒頭の一言です。

その言葉が、迷いを振り切る決定打になったと、彼は後に語っています。

興味深いのは、上司にとってはその助言に「何の得もなかった」ということ。
彼が転職すれば、部署は人手不足になります。
むしろ引き留めるのが管理職としては自然な対応でしょう。

それでもその上司は、こう言ったそうです。

「本気で応援したいと思ったんだ。得とか損とかじゃない。
誰かの人生が動く瞬間に関われたら、それだけで充分だよ」

誰のためでもなく、ただ相手の未来を思って発された助言。
その純度が高いほど、人の心に静かに届くのかもしれません。

私はこの話を聞いて、ふとある疑問が浮かびました。

なぜ、見返りを求めない助言は、こんなにも尊く感じられるのか?

 

 

2. 助言が「利害」を越えるとき、人はどう変わるのか?

現代社会は「Give & Take」で動いています。
働きかけには報酬があり、努力には評価がつく。
それが当然だという空気が、あらゆる場面に浸透しています。

だからこそ、「何の得にもならない言葉」をかけられると、人は戸惑います。
なぜ、この人はここまで親身になってくれるのか?
裏があるのではと、勘ぐってしまうことさえある。

これは、信頼の欠如ではなく、むしろ「利害に基づく関係」が社会に根付いている証拠です。

そうした背景にあってなお、
見返りを一切求めずに語られた言葉が持つ“圧倒的な重み”は、どこから生まれるのでしょうか。

そのヒントを与えてくれるのが、歴史に名を残す哲学者ソクラテスの態度です。

 

 

3. ソクラテスの静かな拒絶と、ジョブズが聞き入れた言葉

紀元前399年。
ソクラテスは「若者を堕落させた」としてアテナイの法廷に立たされます。

裁判で有罪が決まり、死刑が確定。
友人たちは彼に脱出を勧めました。

特に親友のクリトンは必死でした。
逃亡の段取りも金も全て整え、「今なら逃げられる」と訴えたのです。

しかしソクラテスは拒みます。

「逃げることが正しいかどうか。それは世間の意見ではなく、自分の良心で決めることだ」

クリトンの助言は、彼にとっての“正義”でした。
それは見返りのためではなく、ただ「友人を助けたい」という純粋な思いからでした。

結果的に、ソクラテスは死を選びます。
それでもなお、その助言の誠実さは後世に語り継がれています。

この話からわかるのは、助言とは「何を言ったか」ではなく「どんな動機で言ったか」で価値が決まるということです。

もう一人、現代の実業家にも同じ構図が見られます。
スティーブ・ジョブズです。

彼がNeXTを創業したとき、企業ロゴのデザインを依頼したのがポール・ランドというデザイナーでした。

ランドは報酬も肩書きも求めませんでした。
ただプロとして、信じるデザインをひとつ提示しただけ。

「これが最善だと思う。気に入らないなら他を探せばいい」

ジョブズは、この潔さに心を打たれました。

「彼は“お願い”ではなく、“真実”を差し出してくれた。だから信じた」と語っています。

ここにもまた、損得を超えた助言の美しさがあります。

 

 

4. 「利害」を捨てると、助言は本物になる

では、私たちはどうすれば、こうした「見返りなき助言」ができるのでしょうか。

特別な知識や立場がなくても、3つの視点を持つことで、言葉の純度を高められます。

① 助言とは「選択肢」を増やすこと

相手を正解に導くのではなく、自由な選択肢を増やすこと。
本物の助言は、強制ではなく“委ねる”姿勢の中にあります。

② 結果に対して執着しない

助言が報われるかどうかは、相手の人生次第。
自分の言葉が役立つかを期待しない。
「言いたいから言った」という動機の方が、誠実さを保てます。

③ 沈黙の重みを知る

時に、助言は言葉より「聞くこと」で成立します。
無言のうちに察し、相手が気づく余白を残す。
その姿勢自体が、何よりの助言になることもあります。

 

 

5. あなたの一言が、誰かの未来を静かに変えるかもしれない

損得を越えた言葉ほど、人は深く受け取ります。
その理由は簡単です。

そこには、「信頼」も「愛」も、どんな営業スキルにも勝る“真剣さ”が宿るからです。

そして、そうした助言は静かに、でも確実に、人生を変えていきます。

あなたが今、誰かに声をかけたいとき。
もしそれが「見返りなんていらない。ただ伝えたい」という気持ちから出てきたなら――

その一言は、相手の人生にとって、忘れられない光になるかもしれません。

助言とは、未来への祈りなのです。