「自分を過小評価するのも良くないが、過大評価はもっと良くない」
“本当の自信”の話をしよう
1. その自信、思い込みになっていませんか?
「自分にはこれくらいのこと、朝飯前だよ」
そう口にした直後に、現実がそう甘くないと知って顔を曇らせたことはありませんか?
逆に、他人の成功に対し「自分にはムリだ」と決めつけて、動く前から諦めてしまった経験は?
私たちはしばしば、自分の評価を誤ります。
過小評価は可能性を狭め、過大評価は信頼を損なう。
そのどちらも、本来のパフォーマンスを大きく下げてしまうのです。
けれども、本当の“自信”とはその中間にこそ存在します。
今ここで、過信でも自己否定でもない、「自分を正しく見る力」について一緒に考えてみませんか?
2. なぜ「正しい自己評価」は難しいのか?
人間が自分を正確に評価することは、実は驚くほど難しい作業です。
米国の心理学者デヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが提唱した「ダニング=クルーガー効果」をご存知でしょうか?
これは、能力が低い人ほど自分を過大評価し、逆に能力が高い人ほど自分を過小評価する傾向があるというもの。
「知らないことを知らない」ために、自分の限界にも気づけず自信過剰になりやすい。
一方、知識やスキルがある人ほど、自分より優れた人が世に多く存在することを知っている。
そのため「自分なんてまだまだだ」と感じてしまう。
つまり、「自分を過小評価するのも良くないが、過大評価はもっと良くない」という言葉は、心理学的にも非常に深い意味を持つのです。
3. バランスの取れた自己認識を育てる
では、私たちはどうすれば“正しい自己評価”に近づけるのでしょうか?
その答えを、スティーブ・ジョブズやイチローのような成功者たちの姿勢に見ることができます。
スティーブ・ジョブズの「自信」と「現実感」
ジョブズは自信家で知られていますが、彼は常にユーザー視点での冷徹な評価を持っていました。
彼は製品に対し「これは完璧か?」と何度も問い直し、「まだだ」と感じれば作り直しを命じました。
自己満足ではなく、市場の声を信じることで、自分の判断に客観性を持たせていたのです。
自信を過信に変えないよう、第三者の目で見る力を持っていたとも言えます。
イチローが見せた「謙虚な自信」
プロ野球選手・イチローは、打率3割を安定して出す偉業を続けながらも、常に「満足していない」と語りました。
しかしそれは、自分を卑下しているのではなく「まだ上がある」と冷静に知っている証でした。
彼の中にあったのは、揺るぎない基礎への自信と、成長の余白を信じる謙虚さ。
「自分にはまだできることがある」という信念は、過大評価とはまったく異なるものなのです。
4. 自分を見つめる3つの視点
あなたが自己評価を適正に保つために、今日から意識できる視点を3つご紹介します。
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フィードバックを定期的に求める
自分だけの判断は、偏りやすくなります。
周囲の信頼できる人からの意見を素直に聞くことで、客観性が育ちます。
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過去の成果を数値で振り返る
なんとなく「できる」と思い込むのではなく、「実際にどれだけの結果を出したか」を記録しましょう。
成果を見える化することで、冷静な判断軸ができます。
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「過信の兆候」と「自己卑下の癖」を知る
人前でやたらと“できる風”を装いたくなるとき、自分をよく見せようとしていませんか?
逆に、挑戦前から「ムリだ」と言いがちなときは、思考のクセかもしれません。
どちらにも共通するのは、「自分に正直でない状態」です。
5. 企業経営の失敗と自己評価
1990年代、日本の家電大手・シャープは「世界初」の技術にこだわり続けました。
しかしスマートフォンの波に乗り遅れ、サムスンなどに大きく水をあけられました。
その背景には「自社技術が世界一」という過大評価があったと、後年の経営分析で指摘されています。
逆に、ソニーは一時「我々はもう時代遅れだ」とまで言われるほど自己評価を下げましたが、その危機意識がきっかけでPlayStationやミラーレスカメラといった復活劇につながります。
企業もまた「自分をどう見るか」で大きく進路を誤るのです。
6. 自分を正しく見ることが最大の武器になる
「過小評価するのも良くないが、過大評価はもっと良くない」
この言葉は、自信とは何かを問い直す強力なメッセージです。
人は、自分を正しく見たときにのみ、正しく他人を理解し、チームの中での役割を見出し、パフォーマンスを最大化できます。
自己評価の誤りは、自分だけでなく周囲を巻き込んだ“ズレ”を生み出す。
だからこそ、「いまの自分を冷静に見つめる」という姿勢を、何よりも大切にしてほしいのです。
そしてそのうえで、自分を信じ、次の一歩を踏み出してほしい。
本当の意味での“自信”とは、自分に期待する力であり、その期待を裏切らない努力をする覚悟です。
どうか、あなたの中の正しい自分に、今日こそ耳を傾けてください。