自分で全てをやろうとしたり、
手柄を独り占めしようとしたり、
そこから良いリーダーが生まれることはない
アンドリュー・カーネギー
「自分で全てをやろうとしたり、
手柄を独り占めしようとしたり、
そこから良いリーダーは生まれない」――
アンドリュー・カーネギーの言葉です。
19世紀末から20世紀初頭に活躍し、
鉄鋼産業を築いた実業家が残した格言です。
彼はスコットランドから渡米し、
貧しい移民の息子として苦労しました。
しかし自らの手柄を追わず、
協力と信頼を重視して事業を拡大。
労働者の待遇を改善し、
研究開発にも惜しみなく投資しました。
その結果、高品質の製品を生み続け、
鉄鋼王として巨万の富を得たのです。
ここから学ぶのは、成果はチームの協力で生まれるということです。
30〜50代のビジネスパーソンは責任が増す時期です。
上司から成果を求められ、部下から相談を受け、
クライアント対応にも追われます。
「誰かに任せたい」と思いながらも、
「自分がやらなければ」と感じがちです。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」(2021年度)によれば、
この世代の約55%が「仕事で強いストレスを感じる」と答えています※。
自分で抱え込むほど判断力は鈍り、
心身の疲弊が進んでいきます。
その結果、チーム全体の成果も下がってしまうのです。
ここでは、実在の偉人たちの事例を通じて、
「手柄を共有し、チームを活かす」リーダーとは何かを探ります。
1. 真のリーダーシップとは
アンドリュー・カーネギーは、労働者への高賃金を実施し、
安心して働ける環境を整えました。
これにより優秀な人材が集まりました。
もし彼が利益優先で賃金を抑え続けたら、
技術革新は生まれなかったでしょう。
彼の姿勢が示すのは、
「成果はチーム全員の協力で最大化する」という真理です。
2. 偉人たちが示した協力の力
2-1. スティーブ・ジョブズ
スティーブ・ジョブズ(1955~2011年)は、
1985年にアップルを去り、NEXTとピクサーで経験を積みました。
1997年に復帰後は、チームに裁量を与えました。
デザイナーやエンジニアの自由な発想を尊重します。
これがiMac、iPod、iPhoneの成功につながりました。
「すべてを自分で決める」のではなく、
「適切に任せる」ことでチームは飛躍します。
2-2. 豊田佐吉
豊田佐吉(1867~1930年)は自動織機の発明者です。
彼は機械自体が異常を知らせる仕組みを作りました。
職人が自ら改善案を出せる構造を重視しています。
この思想はトヨタ生産方式の「カイゼン」につながりました。
一人ひとりが主体的に動くことで、効率と品質が向上します。
2-3. 渋沢栄一
渋沢栄一(1840~1931年)は「日本資本主義の父」と呼ばれます。
第一国立銀行を設立し、多くの企業を支援しました。
彼は「茶話会」という場を設け、意見交換を促しました。
上下関係を取り払い、率直に話せる環境を整備します。
この対話重視の文化が日本企業の礎となりました。
3. 失敗を共有し、前進する
トーマス・エジソン(1847~1931年)は白熱電球を生むまでに、
数千ものフィラメントを試し、数々の失敗を経験しました。
彼は「失敗は学びである」と捉え、挑戦を続けました。
その結果、ついに実用的な電球を完成させました。
経済産業省『中小企業白書』(2020年版)でも、
「失敗を共有し改善する文化が生産性向上に寄与する」と指摘しています。
失敗を恐れず、チームで共有することで、
迅速に改善策を見出せるのです。
4. マインドセットを変える3つの柱
ここからは、すぐに実践できる3つの行動を紹介します。
4-1. 柱1:目標を共有し可視化する
まずは目標をチーム全員で共有しましょう。
OKR(Objective and Key Results)を活用します。
Objectiveは「大きな目的」を示します。
たとえば「半年以内に新サービスをローンチする」です。
Key Resultsは「成果を測る指標」を示します。
たとえば「3ヵ月以内に市場リサーチを完了する」「5月末にプロトタイプ完成」など。
これらをGoogleスプレッドシートやNotionで一元管理し、
リアルタイム更新できる状態にします。
全員が同じゴールを見ている安心感が生まれます。
4-2. 柱2:タスクを分解し適切に委譲する
目標からタスクを細かく分解しましょう。
「新サービスのローンチ」を「市場リサーチ」「開発」「マーケティング」に分けます。
さらに「市場リサーチ」を「既存データ収集」「ヒアリング調査」「レポート作成」に分けます。
タスクを割り振る際は「なぜあなたに任せるのか」を必ず伝えます。
「〇〇さんの経験が活きるからお願いしたい」などと理由を添えましょう。
理由が明確だと、部下の主体性が高まります。
4-3. 柱3:短時間レビューで前向きフィードバック
タスクを任せた後は放置せず短時間レビューを行います。
週次か隔週で30分程度のミーティングを設けます。
報告形式は「今週できたこと」「直面した課題」「来週の予定」です。
フィードバックは「事実+改善策+次回への期待」をセットで伝えます。
「今週のレポートは分かりやすかった。次は△△の視点も加えるとさらに良くなる」といった具体的な言葉が効果的です。
この方法で、筆者のチームでは資料作成時間が約20%短縮されました。
5. まとめと行動の呼びかけ
実在の偉人たちは「手柄を独り占めしない」ことを示しました。
成果を最大化するには、チームの協力が不可欠です。
今日から取り入れる行動は3つです。
-
目標をチームで共有する
OKRを使い、全員が同じゴールを見られる環境を整えます。
共有ドキュメントで進捗をリアルタイムに公開しましょう。 -
タスクを細かく分解し任せる
「なぜあなたに任せるのか」を伝え、部下の強みを活かします。
理由を明確にすることで、部下の主体性が育ちます。 -
短時間レビューで前向きフィードバック
事実に基づき、改善点と次回への期待を具体的に伝えます。
定期的なフィードバックでメンバーの成長を促します。
大人になっても、挑戦は続きます。
けれど、一人で抱え込む必要はありません。
リーダーとは、周囲を巻き込みながら成長する存在です。
まずは小さな一歩として、目標を共有し、
タスクを任せ、フィードバックの場を設けてみましょう。
チームと共に歩む未来が、必ず開けます。