想像力が変えるもの
ジョン・レノンが遺した
“平和”の本当の意味
いつから、
私たちは“平和”を夢だと思うようになったのか
ジョン・レノンの名曲『イマジン』がリリースされたのは1971年。
ベトナム戦争が泥沼化し、世界中が不安と怒りに包まれていた時代です。
そんな中、彼はただ一言、静かに語りかけました。
「想像してごらん。みんなが平和に生きている姿を」
それは大きな演説ではなく、一篇の詩のようでした。
武器を手放せ、怒りを抑えろとは言わず、
ただ「想像してみよう」と訴えたのです。
この言葉は、いまを生きる私たちにも問いかけてきます。
争いや競争の中で、
いつしか「平和」や「思いやり」は夢物語のように思われがちです。
ですが、本当にそうなのでしょうか。
レノンが見ていた“平和”は、
戦争をやめることだけじゃない
『イマジン』の中で、レノンはこうも歌っています。
「国なんてないと想像してごらん。それは難しくないことだよ」
このフレーズは、政治的メッセージと受け取られることもあります。
ですが私は、ここにもっと深い“人間の本質”への問いを感じます。
人は、目に見えない「境界線」に支配されやすい。
国、宗教、肩書き、所属。
それが自分を守ってくれることもありますが、
同時に「誰かを分ける線」にもなってしまう。
私たちの日常も同じです。
たとえば、職場の中。
部署が違う。立場が違う。考え方が違う。
そのたびに「理解しようとすること」を諦めてはいないでしょうか。
レノンが訴えた“平和”とは、「線を引かない想像力」だったと私は思います。
実在の人物が証明した、“想像の力”の現実性
ネルソン・マンデラの物語
平和は理想ではなく、実践なのだと証明した人物がいます。
南アフリカのネルソン・マンデラ氏です。
彼はアパルトヘイト(人種隔離政策)に抗議し、27年間も刑務所で過ごしました。
もしあなたが27年、自由を奪われたら、
その後、何をしますか?
ふつうなら怒りや報復に生きるかもしれません。
けれど彼は、出所後、敵と握手を交わし、
1994年に南アフリカ初の黒人大統領となりました。
驚くべきことに、彼は「白人支配層」も含めて許し、共に国を作り直したのです。
マンデラ氏はこう言いました。
「敵と和平を結ぶとは、その敵と働くことだ。
そして敵は、あなたのパートナーとなる」
この姿勢は、まさに“想像力”によって実現された平和です。
敵の顔に、未来の仲間の可能性を見出す。
それは容易ではありません。
けれど、現実に可能だったのです。
私たちにできる、“平和を想像する”3つの習慣
レノンやマンデラのような偉人でなくても、
日常で「平和の想像力」を持つことはできます。
たとえば…
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話を遮らず、最後まで聴くこと
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理解できない相手を「否定」せず、「背景」を想像すること
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怒りそうなとき、まず深呼吸すること
これらは小さなことかもしれません。
ですが、人と人との間にある“境界線”を、
そっと消していく力があります。
こうした積み重ねが、
やがて組織や社会の空気を変えていきます。
ジョン・レノンも言っています。
「世界を変えたいのなら、まず自分を変えなさい」
“平和な心”からしか、生まれない仕事がある
ビジネスの現場では、成果がすべてと思われがちです。
数字、実績、競合に勝つこと。
もちろんそれらは大切です。
けれど、そこに「平和な心」がなければ、
チームはいつか壊れてしまいます。
相手の立場を想像し、寄り添い、尊重し合う。
その信頼の土台があるからこそ、
困難な状況でも支え合える強い組織が生まれるのです。
一見、遠回りに見える想像力こそが、
じつは一番の近道なのかもしれません。
“イマジン”を、あなたの日常へ
今、世界のどこかで紛争は続いています。
そして私たちの日常でも、小さな“戦争”が起きています。
理解されない。否定される。距離を感じる。
けれど、それを「仕方ない」で終わらせず、
想像し、寄り添い、つながる道を選ぶことはできるはずです。
あなたが、ふと足を止め、
相手を想像するその一瞬が、
きっと誰かの救いになるのです。
結びに——“心に灯る音楽”を、今も
2021年、国連は正式に『イマジン』を「平和の象徴のひとつ」と認定しました。
半世紀を経ても、そのメッセージは褪せていません。
ジョン・レノンの言葉は、叫びではなく、ささやきでした。
「想像してごらん」
強制も命令もありません。
だからこそ、人の心に深く届き、変化を起こしたのだと思います。
私たちが今日できること。
それは「世界を変える」ことではなく、
目の前の人との関係を、少しだけ“平和”にすることです。
その積み重ねが、いつか世界を変えると私は信じています。